スタッフ「夏の自由研究」レポート
びわ湖ホール「沼尻竜典オペラ指揮者セミナー2017」聴講記・後編
前編はこちら
1「なぜ“聴講”するのか」
2「聴講メモ」
・指揮/指揮者について
・オペラ指揮者について
(後編目次)
3、聴講で得るもの。聴講のススメ
・聴講で発見!あらためて納得。
・「企画」としての「オペラ指揮者セミナー」
・「オペラ指揮者セミナー」聴講のススメ
・まとめ
聴講で発見!あらためて納得。
指揮者セミナーは「指揮者のちから」「影響力」が見事に明らかとなる時間です。訓練された耳と技術を持つ職人集団であるプロのオーケストラは、指揮者の『振る通り』に演奏するものだと、あらためて感得しました。
その『振る通り』が、必ずしも指揮者が『”思っている”通り』ではないことが、聴講する私にも、オーケストラの音の変化でリアルタイムに伝わってきます。
また、交響曲など、オーケストラが主役である「コンサート」の<指揮者>と舞台から数段低い「オーケストラピット」に入り、その暗いあなぐらから、舞台上で華やかに歌い演ずる歌手とオーケストラを率いる<オペラ指揮者>は、同じ[指揮者]であっても求められる要素が大きく異なります。
#オーケストラの音は、指揮者の指先ほんの2cmの動きで、荒々しくもなれば、絹糸のごとくしなやかに。
#5名の受講生と沼尻さん、それぞれのプッチーニを同じオーケストラと歌い手で聴くと、その違いには驚くばかり!
#歌の皆さんは、指揮棒の動き方によって、声の伸びに大きな違いが!
”マエストロ沼尻”
・要点を簡潔に、ユーモアをもって、受講の皆さんへ伝える言葉の引き出しの豊かさ!
・”ちょちょい”という感じで示される指揮の説得力(オーケストラと歌の様子が変わるのが一目(耳)瞭然!)
「企画」としての「オペラ指揮者セミナー」
聴講生視点でなく、ふだん企画をする側の視点からみた「オペラ指揮者セミナー」。
なんといっても、講師である沼尻さんの卓越したファシリテート(進行)が素晴らしいです。
#会場がオペラ劇場であることからくる臨場感の強み。
#プロのオーケストラと第一線の歌手陣による、演奏の説得力。
#大スクリーンが正面に設置されて、指揮者の正面、横からの様子が大写しとなる、聴講生への配慮(劇場スタッフの皆さんに感謝)。
#「ここでオペラの本番をみたら、すてきだろうな」と刷り込まれる仕組み!
#3日間の聴講が一般5,000円、学生は3,000円と破格。真夏に涼しい劇場で3日間過ごしてこの価格☆(本当にありがたいことです)
「オペラ指揮者セミナー」聴講のススメ
自身が音を出さない「指揮」についてのセミナーは、指揮する人はもちろん、声楽や他のあらゆる楽器を弾く人にも、発見にあふれています。
自分の楽器や、演奏したことのある曲のレッスンを聴講する場合、全体からすれば細かい点が気になりだし、大きな発見に気づかずもったいない場合もあります。あえて、自分が実際に専門としていない楽器(今回の場合は「指揮」)のセミナーやレッスンを聴講する良さは、先入観や固定観念に縛られず「音楽そのもの」の成り行きを見つめられることです。
ー指揮者セミナーでの発見を日々に置き換えてー
昨年も感じた「シンプル」こそ難しい!
知らず知らずのうちについてしまう「クセ」の存在、そして、自分を客観視することがいかに難しいか(他の人のことは見えるのです…!)。
そのことを肝に銘じつつ、私に確かな意見を聞かせてくれる、年齢を問わず敬愛する周囲の人たちや、メンターの大切さを改めて感じる今回の聴講でした。
ところで、前編のはじめに記した「なぜ聴講するのか」で自問自答していたテーマの答えに、私は果たしてたどり着いているのでしょうか。
(そもそも「答え」はあるのか、たどり着くものなのか…。)
確かなことは、自分と音楽の関わりについて考えることと、日々の徒然によぎることの大きなことから小さなことは、まず全てといってよいほど深く繋がっているということです。
びわ湖ホールでのこのセミナーは、来年も行われるそうです。
指揮やオペラ、音楽を専門とする方も、もっぱら聴くのが好きな方も、音楽には興味がないけれど、人と人とのコミュニケーションに興味がある方にも、おすすめいたします!