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  • 直前集中掲載「歌い手の脳味噌から」廣澤敦子

  • 2023.2.19 マネジメント

「歌曲」を演奏活動の柱にすえるメゾ・ソプラノ廣澤敦子が、年に一度、趣向を凝らしたプログラムで行うリサイタル「歌物語」シリーズ。
17回目となる「風に吹かれて」は、お客様、また”同業”である演奏家から「あなたに歌ってほしい」と寄せられた楽譜も数多く、今回はそれらを取り上げる【リクエスト特集】です。

各曲について、本番間近の【歌い手の頭の中】を集中掲載!
廣澤敦子のnote(こちらは稀に更新)

公演情報

[大阪市助成公演]
廣澤敦子メゾソプラノリサイタル 歌物語 第十七巻
“風に吹かれて”
公演日:2023.03.12(日)14時開演
会場 あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール(大阪)

◆出演
廣澤敦子(メゾソプラノ)
中村展子(ピアノ)
◆オンライン(チケットレス)のご購入はこちらから。

新しい記事は一番上に追加していきます

日本語の「ウ」万歳!

イタリア語やドイツ語を歌うときに苦しめられることの多い、日本語の「ウ」の発音の呪縛。
日本語の「ウ」の発音はなかなか独特です。そして若い世代に行くほどその独特具合が強まっているような気がします。特に合唱界。
Uの文字を見ると何語であろうと自動的にその独特な日本語のウになってしまう人が多く、修正がなかなか出来なくて難儀する人もいます。私もレッスンでのべ一億回wは注意してるかも。
㊗️朗報。ノルウェー語のUは、日本語のウと似ている。
国際音声記号(いわゆる発音記号)では違うのですが、パッと聞いた感じはかなり似ているなと思います。浅いんです。ゲルマン系の言語だけど、ドイツ語とは違うんですねえ。
ところが長年ドイツ語を歌い続けた性(さが)というやつで、Uの文字を見ると深く発音したくなる。練習してもちょっと間を空けると記憶が深いウに書き換えられている
リンクは、ノルウェーの面白動画。
これはYouTubeですが、Instagramをメインに更新してはります。
このノルウェー語訛りの英語を聞くとお気づきになるかも知れませんが、文章のお尻を跳ね上げるような⤴️高低アクセントがありますね。
今はどこの言語でもこうしてちょっと探せば、生の発音に触れられる素晴らしい時代になったと思うんですよ。生のドイツ語が聴きたくてウズウズしていた学生時代の私が悔しがってる(笑)
今回は初ノルウェー語、二曲歌います。※グリーグ「白鳥」「ソルヴェイグの歌」

ベルリオーズ  「ヴィラネル」(「夏の夜」から)

ベルリオーズの「夏の夜」から、一曲目、ヴィラネルを歌います。
リクエストにあったのです。
学生時代によく聴いていた曲です。あの頃は本当にいろいろよく聴いていました。自分でもなけなしのバイト代でCDを買ったり、寮の先輩や友達からダビングさせてもらったり、図書館に行けばさらに聴き放題。

アグネス・バルツァが好きでした。
クセのあるメゾソプラノ。カルメンがめちゃくちゃかっこよかった。と言ってもあの頃は映像、ましてやリアルでなど観ることは出来ませんでしたから、音だけで想像。
そのバルツァが歌う、ワーグナーの「ヴェーゼンドンクの五つの歌」が聴きたくて買ったCDに入っていたのが、夏の夜。
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ワーグナーは自分も歌いたくて、レッスンにも持って行きましたが、速攻で却下。まあ、私が先生でもそうするでしょうね
でも当時は声に合うとか、そういうの分かりませんでしたから、自分にも歌えると思ってました。
バルツァみたいな強い声(かなりの音域を胸声?)とか、ワーグナーとか、ないものねだりですよね。
夏の夜なら、特にヴィラネルならあの当時でも歌えたはずなんですよ。でもそこに目はいかないんだなあ(苦笑)
学生でお金がありませんから少しでも安い輸入盤を買ったので、日本語の訳詞や解説はないです。かといってドイツ語や英語を読もうという気もありませんでした。
そこから30年も経てば英語でもドイツ語でも時間はかかるけど読めるし、読もうという気持ちも当たり前にあります。それが成長でしょう。
その頃から10年以上経ち、ウィーンでバルツァのカルメンを観る機会に恵まれました。
でももう彼女は旬を過ぎており、舞台に現れた姿は…オバさんでした。オバさんのカルメン、客席からは失笑が。ショックでした。CDの中の憧れの存在でおいておいたらよかった。

グリーグ「ソルヴェイグの歌」

中年の中年による中年のための歌。
今回演奏する曲の中では比較的有名な曲です。器楽曲にアレンジされてイージーリスニング的に使われたり。
グリーグの代表作ともいえる「ペール・ギュント第二組曲」にあります。
ペール・ギュント第一組曲「朝」は今でも小学校の音楽の教科書に載っているのでしょうか。
※注 組曲「ペール・ギュント」が小学校6年生の鑑賞教材となっています(平成29年告示 学習指導要領)
[第一、第二の表記がないのですが、検索してみると第一組曲「朝」「山の魔王の宮殿で」を小学校4~6年生あたりで取り上げる学習指導案がヒットしました(スタッフ)。]
ペール・ギュントって『ペール・ギュント』というイプセンの戯曲のタイトルなんですよ。
そうなれば読まねばならぬわな…と思えど、生来の横着で、YouTubeで見つけた解説動画で間に合わせてました。それはそれで面白かったし。
ペール・ギュントという、割ととんでもない男の放浪、冒険奇譚、とでも言いましょうかね。
で、この歌はソルヴェイグという女性が帰らぬ彼を待ち侘びる歌、ということは分かった。
この動画の可憐な歌声、ぜひ聴いてほしいのですが、こういうのを聴くとほら、若い女性の歌だと思い込んでしまいませんか?
私はすっかりそう思ってて歌ってたんですが、やっぱり、と思ってやっと最近になってペール・ギュントの本を買ったんですよ。
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その歌らしき場面を発見。
そしたらト書きに書いてあるではありませんか。
「金髪の、見目のよい中年の女が外に座って、日の光にあたりながら糸を紡いでいる。」
中年…….
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やっぱりなんでも調べないといけませんなあ。
ソルヴェイグ(ソールヴェイ)は、ペールのことを待って、待って、待ち続けて中年になってしまってたのです。
それこそオペラアリアではなく、歌曲として一人歩きしている曲ですから、それぞれの立ち位置で歌っていいのでしょうけど、中年の私が、中年の歌を歌うのに、少女の気持ちにならないといけない理由はありませんわねえ。私金髪ちゃいますけど。

番外編「歌曲」

歌曲
「私は歌曲を歌っています。」と言っても、なかなか分かってもらえないものです。オペラとどう違うの?って。
でも、その説明として
「ほら、中学校の時、魔王って習ったでしょ?」と言うと、大抵の人は、ああ、あの、死ぬやつ!マイファーザー♪ってやつ!(本当はドイツ語だからマインファーターだけど)と、分かってくれる。そこから話を広げて(知りたそうな人には)説明するのですが。
英会話のレッスンで、いろんな先生に習ってその度に自己紹介。その時に必ず、「オペラではなく、歌曲、art songsを主に歌います。」と言うのですが、まず通じない。
今まで2人通じたけど、それは母国でクラシック音楽を専門にやってた人。
とりあえず、シューベルトの野薔薇なんかを例に説明してみるし、オペラみたいにストーリー、スクリプトじゃなくてグレイトなポエムにコンポーズされたもの、と、言えども、イメージをつかんでもらえない。
イギリス人だとブリテンなんかの名前を出すと分かってもらえることもある。ああ、有名な作曲家だね!と。
先日初めてレッスンを受けたAさん。アメリカ人。継続してレッスンを受けていたBさんが帰国して以来、いろいろな先生を試しています。その中でもBさんから博識だと聞いていた人。
art songs、やっぱり通じなかった。シューベルトの野薔薇を歌ってみたけど聴いたことないって。グレートなポエット(Poet 詩人)の例としてゲーテの名前を出しても、知らんて。(博識ちゃうやん)
ゲーテって、シェイクスピアぐらい有名やねん、と言うと、その説明の仕方が上手いと褒められたけど。
「魔王」という共通の知識がある日本、バンザイ。かく言う私も、中1で聴いた魔王がきっかけでシューベルトのレコード(ディースカウだった)を親にねだり、そのまま歌曲沼に。現在に至る。
そりゃ地味ですよ、歌曲。
でもそれがやりたくてここまで歌ってきたからさあ。

ブラームス「ジプシーの歌」

これはもともと四重唱のために作曲されたもの。合唱で歌われることも多いですね。それを、ブラームス自身により独唱版にされたもの。今回は抜粋で5曲歌います。

詩はハンガリーの民謡を元に書かれたもの。訳詞ではないみたい。
5曲目・日焼けした若者が、青い目のかわい子ちゃんをダンスに誘う。
先日のレッスンで言われたこと。
「君、『青い目(blauäugig )』の意味は分かってるのか?」
へ?ブルーアイでしょう?
「辞書を引いたら、あとの方に他の意味があるから見てみなさい。」
blauäugigのひとつ目の意味はもちろん文字通り「青い目の」
でも2番目に「うぶ」とか、「世間知らず」という意味があったんです。知らんかった。
で、この歌の中では、まぁ..その…おぼこという意味になるんでしょうね。ムニャムニャ。
私の歌い方は健全すぎたらしいw
ちなみに英語でBlue-eyedと引くと、特別なお気に入り、という意味が出てきた。これも知らんかった。
世の中知らんことだらけ。【今週のドイツ語】blauäugig

中田喜直「歌をください」 渡辺達生 作詞

リクエストのアンケートにあった曲。リクエスト特集にふさわしいですよね、歌をくださいって。
この曲は昔、大昔?
とある日本歌曲コンクール予選を勉強のために聴きに行ったんです。そこで歌われていたのがこの曲。まだ中田喜直さんもご存命で、この曲が比較的「新しい曲」だった頃。
その演奏自体がどうかというと、未熟な感じだったと記憶しているんですが、なんか鳥肌が立ちまして、涙が。
当時私は神戸市混声合唱団で歌っていて、中田喜直夫人の幸子さんがよく練習に来られていました。アドバイザー的なお立場だったかな?
で、休憩時間にその感動を話しに行きました。先生、あの歌いいですね!私、涙が出ちゃいました!と。
そしたら、そうでしょ〜、いい歌でしょ〜!と、なんと翌週、楽譜をプレゼントしてくださったんです。
しかし高声向けのキーなので、苦労して手書きで移調譜を作らないといけませんでしたけどね あの頃はとりあえず手書きしか方法がなかったですから。あの楽譜を手書きで移調って、それがどんなにクレイジーなことか、あの曲をやったことがある人にはお分かりいただけると思うのですが、とにかくあの頃はこの曲を歌ってみたい!の一心でした。
今回、久しぶりに歌えて嬉しいです。

グリーグ 「白鳥」「ソルヴェイグの歌」

友人からペータース版のグリーグの楽譜をボンと一冊プレゼントされたんですよ。
いつか歌ってね〜!と。
その「いつか」が来たみたい。
選んだのは
・白鳥
・ソルヴェイグの歌
の2曲です。
二曲とも戯曲「人形の家」で有名なイプセンの詩。当然ノルウェー語なんですが、ノルウェー語がマイナー言語だからか、楽譜にさえもノルウェー語が載っていなくてドイツ語表記だけのものがあるくらい、ドイツ語で歌われることも多いみたい。
だからドイツ語で歌ってもいいのだろうけど、私はハナから大学の先輩のMさんを頼るつもりでいました。グリーグを研究するためにノルウェーに留学された情熱の持ち主。
現在は広島にいらっしゃるため、ズームでつないで発音指導をお願いしました。
先輩の第一声が
「どうしてドイツ語じゃなくて、ノルウェー語で歌おうと思ったの?」
でしたから、やはりドイツ語で歌われることも多いのだなあと再確認した次第。
ノルウェー語はドイツ語や英語の知識があれば、なんとか読み解ける感じ。発音はドイツ語に似たところや、オランダ語に似た二重母音などまったく未知の音はないけど、綴りからは予想できない読み方だったりする。åとかøなんていうのも出てくるし。
未知の言語はワクワクする。

石桁真礼生 「麻姑の手」  服部芳樹 作詞

珍曲。
中国の仙女「麻姑」を題材にした、インチキ臭いwお話です。

昨日書いた信長さんの「時に人が通る」が詩を聴いてもらいたい曲なら、「麻姑の手」はストーリーを聴いてもらいたい曲。
この曲は何年も前に、ある年配の生徒さんから「これ、先生が歌ってるので聴きたい。」と、書き込みのある楽譜のコピーをいただいたものです。ずっとそれが気になっていたのですが、やっと蔵出しです。
ところが楽譜を見てびっくり。
とにかくソルフェージュ的に難しいんです。
しかしこの生徒さんは今でも私がレッスンで譜読みをお手伝いするような方で…..
私に習う前の先生にもらった曲だそうですが、なぜその先生がこの難曲、珍曲をこの方に歌わせようと思ったのか、謎です。(キャラクターはドンピシャとはいえ。)結局難しくて歌えなかったとはおっしゃいますが…
聴く分には、昭和の映画音楽が実は難しい現代音楽の技法で作られているのに、場面にピタッと合うから聴く側にはそうとは気づかせない、みたいな、そんな感じかな。聴くは易し。
インチキ講談師の話をニヤニヤしながら聴くように聴いていただけたら嬉しいです。

信長貴富「石垣りんの詩による組曲[時に人が通る]」(全五曲)

信長さんの歌曲は多くが合唱曲からの編曲ですが、これは純粋に歌曲として作曲されました。(二期会委嘱作品)私は歌曲とは、詩を聴かせるため、本の中に閉じ込められている詩を立体的にするためにあると思っているんですが、これはまさにそういう曲。

詩は「表札」など、教科書でも親しんできた石垣りん。
時代の違いもあるのですが、白秋など男性の詩人と違って、女性の詩人って、生活に根ざしていたり、どこか生々しかったりするところがいい。万年厨二病の男性詩人とは違うんですよね。それはそれで好きだし愛しいんですけど。
信長さんが選んだ詩はそういう女性詩人ならではの生々しさはあまりない。それは曲にしにくかったから?それとも信長さんが男性だからそういうチョイスになった?そんなことを思いながら楽譜を見ています。
「舞」や「涅槃」が、詩から受けるインスピレーションによる音の世界を聴いてほしいとすれば、この「時に人が通る」は詩そのものを味わってほしい…そんな曲。
また、信長さんの合唱曲にはない密度の音楽も聴いてほしいです。
今回のリクエスト特集で私が勝手に「塚田佳男先生*枠」と呼んでいる曲です。レッスンの時、先生が、「これ、いい曲だから歌ったいいよ」と言われたという意味でリクエストされたということにしています

「歌物語 第14巻での共演の様子はコチラ

ブリテン 「聖体のキャロル」・ハウエルズ「ダビデ王」

ブリテン Corpus Christi Carol 聖体のキャロル」
ハウエルズ King David ダビデ王

イギリスの作曲家の曲を2曲。

「ダビデ王」は、ロンドンで活躍されている音楽学者の松本直美さんのオンライン講座で出逢った曲。
その講座ではいろいろな曲を扱ったのですが、この曲はなんだか好みだな….と、思いながら聴いていました。また、ハウエルズはタローでもアカペラ作品を歌ったことがあるので、名前にも馴染みがありました。
そうしたらその講座の翌日に直美さんからメッセージ。
King David、あなたに是非是非歌ってほしいわ〜!
直美さんは直接被ってはいませんが、大学の憧れの先輩でもあります。
私も気になっていた曲だったので、あのメッセージは嬉しかったですね。今回リクエスト特集ということで、真っ先に入れようと思った曲です。
で…プログラムの中でどう扱うか…。ハウエルズ1曲ポーンとあるのもおさまりが悪い。何かと合わせたいな…と思っていたところに「(リクエストは)もう遅いですか?」と、あるタローメンバーがリクエストしてくれた曲がブリテンの「聖体のキャロル」
この曲の合唱バージョンをタローのクリスマスコンサートで歌ったんです。
まったく覚えてないんですけど
大丈夫か、私。
それはともかく、キリストはダビデの子孫と言われているし、突飛な組合せではないと思い、決定。
ジェフ・バックリーが幻想的に歌い上げています。
ちなみに
ブリテンは生誕110年
ハウエルズは没後40年
というメモリアルイヤーになります。偶然ですが。

橋本國彦「舞」  深尾須磨子 作詩

一つ前に書いた「涅槃」が集中力なら、「舞」は体力とテクニック、か。
副題に
「六代目菊五郎の娘道成寺によせて」
とあり、深尾須磨子が歌舞伎を観てインスピレーションを受けて書いた詩です。
この娘道成寺、私の浅い歌舞伎ファン歴ではなかなか完全版を観る機会に恵まれないんですね。なので、ネットにある解説を読むだけではピンとこない。
それが最近になって玉三郎のものがYouTubeに上がっているのを発見!やっとこの詩の意味がつかめてきました。
聴く人にたとえば字幕などで詩を見ながら聴いていただいたとしても、この娘道成寺の文脈がなければ理解は難しいでしょう。断片的に想像出来るけど….って感じ。
私も何度か歌ってきましたが、歌詞についてはよく分からないまま歌ってきたと言えます。私にしては珍しいことです。しかしそれでも歌ってきたのは、また、昔、初めて聴いたときに意味が分からずとも魅了されたのは、そこに圧倒的な音の世界があるから。東西の見事な融合。何度聴いても、歌っても、血がたぎるのを感じます。そんな曲です。
今回のプログラムはリクエスト特集なんですが、実はこの曲が希望が多かったんです。

大学生の時、レッスンの時間に先生が
「『舞』っていう歌があるんだよ」と、非常にザックリとした情報(笑)を私に。
だから何?なんですが、気にならないこともなかったので、図書館で楽譜を開き……閉じました(笑)
図書館にレコードもあったでしょうが、聴いてみようとも思いませんでしたね。
写真は、これは私にゃ縁はないわ…歌えるかいな、と強く思った箇所。今でも歌えませんけど。
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まず、緇衣(しい)という漢字にビビり、「とんぼがえる」の、一点ドから、二点ラ♭ の無茶な跳躍。
そんなことくっきりはっきり覚えているくらい一介の学生の私にはなかなかショッキングな楽譜でした。
今なら、歌舞伎の台詞のテンションの高いところならこれくらいの高低差になる、と分かるんですけどね。
私は結局学生時代、ただの一曲も日本歌曲はさせてもらえなかったのに、先生がそんなことおっしゃったのは、きっと、そのレッスンの直前にでも、どこかで実演を聴かれたのでしょう。そして聴いちゃうと強烈だから(笑)ふとレッスン中に頭をよぎって言われたのかなと想像してます。
私もレッスン中によく、頭に浮かんだことを生徒さんに脈絡なく言いますもんねw
と、いうわけで、舞といえばまずあの時のレッスン室の風景が思い出されるのです。

今回はリクエスト特集ということで、この曲もリクエストをいただいていたのですが。
うん、これは歌おうと即決したのは、私が以前の廣澤ではないから(大げさ)
これまで何度かは歌ってきたけど1番最近に歌ったのは、4年前の香港での日本歌曲リサイタル。日本歌曲といっても所詮はヨーロッパの音で作曲されたものが多いから、外国の人に日本歌曲といっても、結局「知らない言語の曲」くらいにしか思ってもらえなかったりする。
でも、先日関西歌曲研究会で歌った民謡ベースのものだとか、この「舞」は、言葉ではなく、音楽そのもので日本を感じていただける。
たとえば8日にタローで歌う「世界のわらべうた」の“音楽の”お国柄の豊かさよ。言葉が分かればもっと楽しいけど、それを超えた何かがある。
実際、香港では大変喜んでいただけ、リハーサルを聴いてくれていた伴奏者の友人たちは「なんなの!これ!」と大興奮。
話を戻そう。
4年前の私と今の私と大きく違うところは、私が歌舞伎ファンになってしまったということ。
歌舞伎ファンの廣澤が「舞」を歌うのはこれが初めて。
聴く側にはなんの違いもないだろうけど、私には楽しめる要素が格段に増えた。詩人深尾須磨子が歌舞伎観劇の座席で圧倒されている様が自分にも分かるから。
1929年の作品
作曲者の橋本國彦は若干25歳。
うちらの先生の先生世代の方は、芸大で橋本國彦に習った、なんて話を聞きましたね。

木下牧子「涅槃」 萩原朔太郎 作詩

3年前に関西歌曲研究会で歌わせて頂いたのを聴いた方からのリクエストということで、嬉しいです。
そもそもこの曲を歌うことになったのも、プロデュースの高須礼子先生からすすめていただいた、つまりリクエストというわけで。それがなければ出会わなかった曲でした。
その時の録音、あら探しをすればキリがありませんが、ライブの良さが出てるなと思ったので思い切ってYouTubeにアップしました。
そして英会話の先生、シャンテルに手伝ってもらって、英訳を載せることに。
この作業、実に面白く、詩を深く理解するきっかけになります。
たとえば日本語は主語がなくても成立するけど、英語はそうはいかないから、主語が誰、あるいは何なのか考えないといけない。また、形容詞がどこにかかるのかとか。
あるいは「美しい」という言葉をbeautifulだけで表していいのか。他に言い方はないか。どんなニュアンスの「美しい」なのか…etc.
(そんなやりとりがあったから、彼女、お別れに類語辞典をプレゼントしてくれたんだと思います)
凝ったことや、音質がどうの、とかは出来ないけど、これくらいの動画を作るのはちょちょいのちょいですわ。2年間オンライン授業動画作り続けた腕をなめるなよ

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