「「上杉春雄ピアノリサイタル ”平均律+”vol.2」
11月13日(金)兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院 小ホールでのコンサートまで、あと3週間となりました。
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今回のコンサートの当日配布プログラムには、昨年に続き、上杉春雄自身がプログラムノート(曲目解説)を執筆いたします。
すでに原稿は届いております!
月刊「ぶらあぼ」での連載執筆(現在は終了)や「ピアノ共演法」(マーティン・カッツ著/音楽之友社)の共同翻訳など、文筆にも冴えを見せる上杉の曲目解説を楽しみにしてくださっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
原稿は、今回のサブタイトル「動きの間に色たちのぼる。音が動けば身体も踊る。」に寄せた序文と、各曲の解説という構成です。
その中から、プログラムの最後にお届けする、ラヴェル「鏡」より”鐘の谷”の部分の解説を特別にお届けいたします。
ラヴェルが晩年に患った病について、医学的見地と音楽家としての心の動きに寄り添った考察となっています。
★プログラムの序文上杉春雄:~脳と身体、心と感動~もあわせてどうぞ!
ラヴェル:「鏡」より ”道化師の朝の歌” ”鐘の谷”の解説より後半部分
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終曲“鐘の谷”では、再び静謐さに満ちた素顔を見せます。靄のかかった無人の谷にこだまする様々な鐘の響き。そして中間部の息の長い旋律には、ラヴェルの真情が吐露されているようです。
ラヴェルが晩年発症した病気は、おおむね「進行性失語症」と考えられています。認知障害はなく、作曲能力も失われず、ただ言語能力とともに楽譜を書いたり読んだりする能力がどんどん衰えていったようでした。1933年に素敵な歌曲を作曲した後3年余り、ラヴェルは一曲も作品を書いておりません。頭の中では音楽が鳴り響いていたというのに・・・じっと一日中椅子に座っているそのころのラヴェルは、「何をしているの?」と問われ、一言「待っている」と答えたそうです。
最後は脳腫瘍と誤診され、手術の数日後にラヴェルは世を去りました。
もちろん“鐘の谷”作曲時のラヴェルは元気だったわけですが、この静かに澄んだ響きを聴いていると、晩年の孤独なラヴェルの素顔が確かに見えるような気がします。(上杉春雄)
上杉春雄がライフワークとするバッハ「平均律クラヴィーア曲集」と、後半はフランスを中心にバロック時代から近代まで「色」「動き」「踊り」をテーマに編んだ深まる秋に聴きたい、しっとり&華やかなプログラムです。
ぜひご来場ください!
11月13日(金)19時開演
兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院 小ホール
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